ウツボラ(全2巻)中村明日美子 ネタバレ感想

あらすじ
投身自殺をした少女とその双子の妹、小説『ウツボラ』をめぐる謎の物語。盗作に手を染めた作家・溝呂木は深い闇に追い詰められていく。中村明日美子初のサイコ・サスペンス。

以下ネタバレ注意です。

ウツボラ 感想と考察

若い女性がビルから飛び降り自殺をする場面から物語が始まります。
彼女の名前は「藤乃朱」。朱の携帯には、双子の妹「三木桜」と作家・溝呂木の通話履歴が残っていました。

溝呂木が連載している小説「ウツボラ」の本当の作者は「藤乃朱」で、溝呂木は盗作をしていました。この秘密を三木桜は知った上で溝呂木に近づき、「ウツボラ」の次回作の原稿と引き換えに体の関係を迫ります。
溝呂木は同じように生前の藤乃朱とも関係していました。

藤乃朱はなぜ、自殺したのか、また三木桜の目的はなんなのか。

自分の読解力の無さのせいなんですけど、一度読んだだけではわからなくて、ネットで検索したところ、同じように混乱している方が沢山おられるようでした。
「ウツボラ考察ブログ」なるものも多々ありまして、それらを読ませてもらった上で、再度読み返しようやく納得したという(笑)ちょっと私には難解なお話でした。
こうだとも、ああだとも取れる微妙な表現もあったりして、読む人それぞれ微妙に違う解釈をされているようでした。
納得できる部分といやーそれは違うわーとか悩みながら、私なりにたどり着いた解釈を簡単に書きたいと思います。

溝呂木の前に現れた双子の女性「藤乃朱」「三木桜」
これは両者とも偽名で
「藤乃朱」=秋山富士子という溝呂木ファンの女子大生
「三木桜」=横領容疑で逃亡中の元OL
というのが二人の正体です。
双子というのは嘘で、二人は図書館で出会った、恋人のような関係でした。

(ややこしいですが以下彼女たちの偽名の方で書いていきます)

藤乃朱は熱狂的な溝呂木ファンで、自らも小説を書いていました。彼女が書いた「ウツボラ」という作品を三木桜は内緒で「月刊さえずり」の新人賞に投稿します。ところが藤乃朱も自ら「ウツボラ」を投稿していました。

この2つの「ウツボラ」は1つは編集者の辻、もう1つは溝呂木が手にします。
溝呂木は作家としての才能の枯渇を感じて苦悩しており、この作品を盗作し、自分の作品として発表してしまいます。

出版社のパーティで、藤乃朱と名乗る女が溝呂木の前に現れ、溝呂木は困惑しつつ彼女のいいなりに、二人は何度か体の関係を持ちます。しかし、これは本当は三木桜の方。溝呂木ファンのの為にがお膳立てをしたといったところでしょうか。

とうとう藤乃朱三木桜と同じ顔に整形し、溝呂木と一夜を共にします。
しかしこの後、藤乃朱は投身自殺。

彼女は溝呂木に愛されることよりも、こうすることで、溝呂木の作品の中に自分を永遠に残してもらえると考えたのです。

藤乃朱の遺志を継ぐべく三木桜は彼女の残した「ウツボラ」の続きを毎月溝呂木に渡し、逢瀬を重ねます。

次第に溝呂木を愛するようになる三木桜ですが、潮時だと感じた彼女は、編集者の辻に自分が藤乃朱で「ウツボラ」の作者であると暴露します。
その直後、三木桜は辻に抱かれるのですが、このとき彼女は処女でした。

ん? 溝呂木と何度も寝てたじゃん!?と思ったのですが、これは溝呂木は性的不能者だったということ。最初、見落としていたのですが子供の頃の事故が原因でとのエピソードがありました。スイマセン、この辺の詳しい事情はわかりません(汗)
とにかく、溝呂木とのセックスは、毎回挿入には至っていなかったってことだと思います。

三木桜はその後、藤乃朱が自殺したビルで、溝呂木に「ウツボラ」を最後まで書き上げるよう言い残し、自ら飛び降りますが、ここは一命を取り留めます。

溝呂木は藤乃朱を登場人物として「ウツボラ」を最後まで書き上げ、三木桜を最後に抱いた翌日、自殺しました。

そしてエピローグ。会話の内容から、溝呂木の死後から9ヶ月ほど経過しているようです。
溝呂木の墓参りに訪れた三木桜が身籠もっていました。

さて、誰の子だ?という謎を残して物語はおしまい。

・・・えー、辻?
だって溝呂木は不能だったでしょ?モヤモヤするー!

でもここは、溝呂木の子供だと解釈しました。辻の子孕んでも、ストーリー上あまり意味を持たない気がします。

溝呂木は死の直前、作家として再起したことで、あっちも再起したわぁwみたいな奇跡が起きたと私は勝手に解釈することにしました。お願いっ!そうであってほしいw。

中村明日美子さんの作品も好きでよく読むのですが、最初はちょっと不気味な(失礼)絵柄だと思っていたのですが見慣れてくると美しい絵画のように思えてきました。
「ウツボラ」のストーリーとこの独特の絵柄が相まって、このマンガが異彩を放つものへとしているのではないでしょうか。

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